No more walks in the wood by イーグルス 2007


No more walks in the wood.
The trees have all been cut down.
And where once they stood.
Not even a wagon rut appears along the path
Low brush is talking over.

No more walks in the wood.
This is the aftermath
Of afternoons is the clover fields
Where we once made love
Then wondered home together
Where the trees arched above

Where we made our own weather
When branches were the sky.
Now they are gone for good.

And you,for ill, and I
Am only a passer-by.
We and the trees and the way
Back from the fields of play
Lasted as long as we could.

No more walks in the wood.

この曲は、ご存知去る3年前の秋、2007年10月に突然イーグルスが、『ロングラン』より28年振りに発表した、2枚組みのオリジナルアルバム”Long Road Out of Eden" 冒頭の曲である。
イーグルスは、実は、1980年のライブアルバム発表以来、公式発表を行わないまま、実質解散していたが、その後メンバーはソロ活動を活発に続けていた。1993年に、カントリーのミュージシャンが集まり、イーグルスのトリビュートアルバム『コモン・スレッド:ソングス・オブ・イーグルス』を作成、大ヒットしたらしく、そのころからイーグルスの再評価が高まった。この年5月27日より、再結成しワールドツアーを行うきっかけとなった。
このツアーのライブは、新作のいくつかの曲を加え、アルバム『ヘル・フリーゼズ・オーバー』に収められた。
このときの、ライブは日本でも1995年11月にもあり、今回の日本ツアーは、それ以来ということになる。(以上、『EAGLES THE COMPLETE GREATEST HITS』の解説より)
このツアーの後も、ミレニアムコンサートを1999年12月31日に行うなどし、バンドとして再始動する機運が高まったころ、もう一度オリジナルアルバムを発表しようと制作に入ったらしい。
結局、その直後、2001年彼らは、DVDシングルとして『Hole in the World』という曲を、唐突に発表した。唐突といおうか、必然といおうか、このときの事情は、その2年後2003年に2枚組で発表したベストアルバムにつける解説として、ドン・ヘンリーグレン・フライが彼らの歴史を1曲づつ振り返る興味深い対談をしていて、語られていた。
あの、9.11のとき、まさにイーグルスは、スタジオに入りレコーディング準備をしていたが、事態のあまりにも深刻な状況に、中止せざるを得なかったというのだ。
しかし、たった1曲だけ、ドン・ヘンリーは曲を作った。それを、イーグルスのメンバーでDVDレコーディングしたのが、Hole in the World だったという。
(この曲のことは、依然少し触れたので、そちらもご覧ください。→http://d.hatena.ne.jp/izai/20100626/1277568863

結局、その4年後、28年ぶりにオリジナルアルバムを発表することになるが、そのアルバムに9.11のことが、色濃くなるのは、必然であった。かなりの長期にわたる分裂状態を、曲がりなりにもオリジナルメンバー4人が集まり、しかも2枚組みになるニューアルバムを発表することになるのも、事件の衝撃が非常に強かったことを感じさせる。

さて、冒頭のNo More Walks in the Wood は、この2枚組みオリジナルアルバムの1枚目の1曲目で、アルバム全体を象徴する曲であることを、歌詞を写してい手思い知った。
つまり、この曲は、アルバムのコンセプトである、『エデンの園から追われた人類』のことを、歌っているのである。
エデンの園から追われた人類が、ローマ帝国を作り、帝国崩壊後、教会の支配する王国を作った。その後人権に目覚めた庶民により、貴族は革命で追われ、科学の支配が始まった。人類は、産業革命を起こすと、アメリカへ渡り、インディアンの森を開拓し、楽園を作ろうとし、カリフォルニアまで達した。
しかし、その歴史の連続の終点であった、西海岸カリフォルニアに、たまたま?い合わせたイーグルスは、「ロック」という音楽の終焉、「フロンティア」の消失を重ねあわせ、ウッドストックの行われ、アメリカがベトナム戦争に本格的にのりだした年、1969年をそのポイントに設定し、『ホテル・カリフォルニア』というアルバムで問いかけた。そこで、カリフォルニアに人類が築き上げた都市文明は、失った楽園(パラダイス)ではまったくなく、「ラスト・リゾート」にしか過ぎない、そこは実は『ホテル・カリフォルニア』でわれわれは囚われているのだ、といったのである。

アメリカと同じように、今、中国が、南アメリカが、アフリカが、地上の樹を切りまくり、地上に自分たちの楽園を作ろうとして、アメリカと同じ末路をたどろうとしている。もちろん日本もそうだったのだが。
2001年に起こった、あのグラウンド・ゼロの事件が本質的にどんな意味があるのかは、まだ歴史の中にいるわれわれにははっきりとはわからないが、イーグルスが、2枚組みになるアルバムで、必死になって考えようとしているのは、確かである。
あの日、「世界に大きな悲しみの穴があいた」と彼らは歌った。
そして、今彼らは、「もう、森を歩くことはない」と歌う。
この曲の詞は、ドン・ヘンリーが、ある詩人の詩をベースにして作ったようだが、森林の乱伐が、歴史の起源であるアダムとイブの楽園追放を起源にしているのではと思わせる、イメージの重なりがある。しかし、われわれを追放しているのは、もはや神ではなく、われわれが作った文明なのであるが。

では、われわれは、どうすべきなのか。

やはり、イーグルスというのは、ただならないバンドなのである。