『みんなのカフェ』京都堺町画廊〜3・11により福島から避難されている方々のお話を聞いて

3月3日、堺町画廊で行われた『みんなのカフェ』〜この一年を、ふりかえって〜にて、福島から京都へ自主避難されて、現在ボランティアで「避難者と支援者を結ぶ京都ネットワーク みんなの手」を立ち上げられ運営されている二人のお母さんのお話を聞いた。
会場の堺町画廊は、京町屋を保存、画廊として改築された建物。あまり広くはないその中にたくさんの方が集まり、熱気を持ってマイクを通さない生の声に耳を傾けていた。
部屋には大きなペレットストーブがおかれ、中でペレットが明るい炎を出して燃えていた。
わたしは遅れて参加したため、最初この会場に入れなかった、それくらい一杯であったが、すぐ休憩になり、人が少し入れ替わり、座る場所が空いたと主催者の方に教えていただき、中にようやく入れた。
地震だけでなく原発事故でも被災された福島の方々は、その事故の状況や放射能に対する見解、対処法等について、マスコミやインターネットでいろんな情報があり、当初から大混乱と言える状況だった。
これには福島県自治体が逃げようかどうしようか迷っている人たちに、安心だから引き留まるように県内で説明会を積極的に行い、パニック鎮静策を実施した結果、強制避難区域以外の地域での住民の方々の避難は、地元のコミュニティと県に離反するような行為と写り、住民間の反目、家族同士の対立や離反、をよび、いまだにそれは続いている。
またそうでなくとも、仕事や復興のため家族の中で多くの場合、父親が福島や職場のある周辺の場所に留まるケースが多く、多くの避難者は二重生活を余儀なくされている。
またさらに自主避難者には、補助が最初出ないと言われていた。これは昨年、避難された方のなかで北海道に避難されているシシドさんという方が、国会で自主避難者の現状を発言され、少しは補助を受けれることになった。
わたしはこのことをETVの『青春リアル〜福島をずっと見ているTV』で知った。
この番組では、福島から自主避難した家族と福島に残り続ける家族をひとつづつ取材し、それぞれの思いを紹介していた。
その番組では、この二つの家族から一人づつお母さんを呼びお二人を対談させ、さらに震災前に福島から出て他地域で暮らしている方を交え、全国から寄せられたこの問題に対する意見で印象的なものを選ぶという試みをしていた。
このなかで、避難するのもしないのもすべて自己責任という考え方は、すごく強い人間にしかとれない、そんなに強い人ばかりじゃない、という意見が取り上げられ、みなさん共感されていた。

この堺町画廊の集まりでも、発言されたなかに、福島にまだいる方に対し、早く避難しては、と助言を続けていたが、結局それは相手を傷つけていたのだ、と納得するに至ったという話があった。
かようにこれほど酷いというか、放射能の低線量被爆の影響が識者でもはっきり明言する人は少なく、またかつてそうした分野で実証された具体例はまったく地球の歴史上 ないだけに、自己責任で決めると一口に言うような軽さではとうてい語れない、得体の知れない重さがある。

もう、あれから一年近く経った。『青春リアル』でもまだこの福島の特集は続いているが、今後の見通しというには、まだすこし小さすぎるが、何か少し認めてもいいような動きについて、『みんなの手』の代表の西山さんが語っていた。

具体的には、西山さんはいくつか福島からだけでなく東日本から自主避難されている方々への支援もふくめたプロジェクトを紹介された。
・生活家電を自主避難者に調達する「生活家電支援プロジェクト」
・お盆に福島京都間のバスを運行し家族再開を応援する「家族再会プロジェクト『夏』」
・避難している子供たちの故郷の同級生を京都に招待し一緒に思い出作りをする「同級生再会プロジェクト」

この「家族再会プロジェクト」は『冬』版がすでに正月に行われ、約70名の方の参加があったと、会場で配られた「みんなの手」のリーフレットに書かれていた。
これらプロジェクトの内容は、そのまま自主避難者がいまどのような状況におかれているかを、自ずと物語る内容になっている。
それのみでなく、京都府や市が福島からのこれら自主避難の方々に公務員宿舎や府営住宅を無料提供しているが、その期間は二年間であり、これが切れたときはたしてどうなるのか?通う学校や仕事のことも含め、長期の計画がたてれるような期間ではなく、これらの延長がなされるかどうかも目下の懸念事項となっている。
さらにまだ福島に残られ暮らされている地域の、子供を週末だけでも線量の低い地域に移動させ、温泉に入ったりして親子で過ごすプロジェクト等もあるが、そうしたことはいまのところ行政や国から援助は残念ながら、出ていない。

もちろん東北の他の被災地にも、これと似た現状、住居や仕事場の復興がいまだなされず、断ち切られたコミュニティや狭い仮説住宅の過酷な環境に神経が参り、精神的に追い詰められ、鬱の症状や離婚やはては自殺など、悲しい現実はある。
どちらが悲惨かなどはもちろんくらぶべくもないが、被災地以外の地域の人たちがこれらの現状ににいかに関わるかについては、大検討すべき課題であって、たとえばその一つに義援金があった。
しかしどうもまだそれは被災地にいる方や避難されている方々にまだちゃんといってないらしい。
また、もうひとつ放射能被曝の検診が、行き渡ってないという報告もあった。
これについては福島県内のような線量の多い地域で測ると測定がうまくできない機械の問題もあるとのこと。どこか別の場所で測る必要がある。そういうことも、まだままならない。

会場で、やはりそこで草の根でも声をあげないと何も変わらない、という意見も出た。
そこで、西山さんが話したことが、非常に印象に残った、それをうまく書けないかもしれないが、この場でお伝えしたい。
〜真っ暗闇にも思える現状について、ひとつだけ明るい光が射していると思えることがある。それはいろんな政治の判断、東電やマスコミの隠蔽など、巧妙になされ、原発の再稼働も行おうとする動きのなか、かすかに射す一筋の光である。
『みんなの手』のリーフレットは、脱原発や反原発などの言葉は政治的な活動を示唆するという懸念から、あえて極力使わないように細心の配慮をした。
それは、避難者として国や行政の援助を受けぶら下がっている身では、なかなか口にできない言葉である。
しかし、放射能に故郷を汚され、福島から追われざるをえなかった人間が反原発でないわけはない。何を好んで家族離ればなれで生活せねばならないのか。
それはひとえに未来を担う子供たちのためであり、そこに、世論という強い力が、光のように見えてくるのを感じる。
経産省の前で座り込みをする人たちのことを、もしかすると経産省内部のかたでも、都合よく思う人もいるかもしれない。
なぜなら、それをいわば口実としてでも、きっかけを作り動けるからだ。少しでも福島の現状を打開するような法案への動きが、そこで生まれるかもしれない。それを好ましく思う人も、官庁の中にはいるだろうからだ。
だから一人一人が、できる限り頭を使い、自分のいまいる位置で、現状を少しでもよい方向に動かすために、何ができるかをよく考えて、ぜひ実行してほしい。〜


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