アラフォー/ファイブ年鑑4ビートルズ

なぜかビートルズである。なぜオフコースからビートルズに飛ぶのか?
何となくなぜオフコースに出会ったか?ルートをたどるうえで、原点に戻った。
ビートルズについてしかしわたしがなにを語れるだろうか?
わたしはビートルズの本当のファンだという自覚が持てない。
まずレコードを買ったことがない。
小学校五年のとき、私の幼馴染みがアメリカに行き、レット・イット・ビーのアルバムを買って帰ってきて、借りてビートルズをはじめて通しで聴いた。
しかし私はそのちょっと前、夏休みに遊びに行った当時女子大生だった叔母の部屋で、彼女の留守中同じレット・イット・ビーを聴き衝撃を受けていた。
その帰り道の車の中で覚えたばかりのあのさびの部分を、
わなみ〜わなみ〜〜
と歌って、父にあれはレッイッビーと歌ってるんだよと指摘された思い出がある。
それ以降興味を持ち夢中だったというわけでもなかった。
私がその後こずかいではじめて買った洋楽のレコードは、実はカーペンターズの二枚組ベストアルバムである。
その次に買ったのがクイーンの華麗なるレースで、それ以降クイーンのファンを自称し、ロック好きの友達からは「フレディ」と呼ばれていた。
出っ歯なところが似ていてつけられたのだ。
ただじつは…告白しよう。
昔からわたしはなにかのファンと呼べるほどぞっこんになることができない子供であった。
ファンになるには「天才」つまり対象の音楽やミュージシャンの天才に気付く才能が必須なのだ。
子供であってもそれがわかるから、天才のある子供はなにかのファンになることができる。
自分はそれがないのにうすうす気付いていながら、自覚がなく、なにかがすごく嫌で原因がなかなかわからなかった。
だから、わたしには意識的にファンになる対象を作り、自分で思い込ませるみたいなところがあった…
いまにして思うとどこがいいのかわからないまま、ファンになっていたといえる。
ファンと自称したクイーンはもちろん、ビートルズはまさにそうだった。
しかし不思議なものでクイーンの曲は7作目のザ・ゲームまですべて歌える?(歌詞が英語だから歌えはしないがメロディは歌える)し、長年クイーンの音楽を頭で思い出し聴いているうちに、いまでは良さがかなり分かっている。
たしか中学の頃、よく聴いていたキープユアセルフアライブ(炎のロックンロール)のよさが確信のようにわかったのはそのほぼ十年後大学三回生の時だった。
情けないが…
だから、私にとっては小学六年のときビートルズのアビー・ロードを、なんとそのとき発売されたばかりのあのイーグルスホテル・カリフォルニアと一緒に貸してくれたH君(アメリカにいっていた友達とはちがうが)なんかはまさに天才であった。
彼はおそらくそのときからビートルズのよさがわかっていたことをわたしは確信している。そうは言わなかったが、内心意識せずにだが、非常にうらやましく、尊敬していた。
わたしなんかは、聴くことは聴いて、まぁまぁだが、心底いいと思えない、でもファンを自称する、偽ファンだったなとあらためて思う。
肝心のビートルズだが誰かからレコードを借りたり、FMからエアチェックしたりしまくり、テープだけはたくさん持っていた。つい一年前くらいにはじめてCDを買った。
ラバーソウル〜あのノルウェイの森が入っているアルバム、ビートルズがコンサートをやめてレコーディングアーチストになったはじめてのアルバムだ。
はじめて聴いたのは高校の頃だったが、さすがに、25年間何度も耳にしていた。
あらためて聴いてやっとビートルズのスゴさが耳に沁みた。
ビートルズで私の一番好きなアルバムである。
ここにはこのすぐあと出るリボルバーやサージェントぺパーズの予感、ホワイトアルバムへマジカルミステリーツアーからアビイロードへ続くながい旅の出発の新鮮な雰囲気が一杯つまっている。
一曲目のドライブ・マイ・カーは、その出発を印象付ける音に満ちている。
そんなことに気付いたのはつい最近なのである。
そこがわたしの情けないが鈍感な感性の結果である。とともにビートルズがいかに繊細な音作りを目ざし、それを驚異的に達成していたかの証明である。
POPミュージックには様々な役割があり、聴く人のおかれた環境や年代、心境や立場、使われる用途等に応じ多用な聴かれ方をするように思うし、こう聴くべきだふうのことは言うべきではないだろう。
しかしためしにもう一度ラバーソウルを耳を澄まして聴いてみてほしい。
きっと、あの微妙な味わい、POPでありながらブルースっぽく、シャンソンのような翳りもある色に気付かれるだろう。
あのノリノリのドライブ・マイ・カーにしてからが、夏の時代を若くして過ぎた、秋のこくのある翳りが感じられるのである。
もはやその味わいに気付けばもうビートルズからは逃れられない。
まさに彼らはそんな表現のできる才能を強いられていた〜まぎれもない天才集団だったのだろう。

しかし、レンタルが当たり前な昨今、音楽だけでないだろうが、人間正規にやはりお金を払わないと、そのよさはわからないかもしれない。
こずかいをすこしづつため、一枚づつ買ってクイーンのレコードを繰り返し聴いていたころ、いまよりも、クイーンを理解していたのかもしれない。
人は自分のことさえ、すぐ忘れてしまう…