ドラマのNHKをくつがえす?民放ドラマ『火車』

この間火曜日がNHKのドラマの日になっている、ことを書いたが、これは番組編成だけの問題でない。
たしかに民放のドラマよりNHKの火曜のドラマは面白かった。
たしか最近映画になった『八日目の蝉』は、かなり前だが、たしか火曜のこの時間帯で檀れい主演でやっていた。
それは久々に見ごたえのある素晴らしいドラマだった(映画は見てないがたぶんテレビの方がいいように勝手に思っている)。
そのあと覚えているのは『君たちに明日はない』、タイトルは忘れたが和久井映見伊東四朗が父娘を演じていたのでいいのがあった、それと黒木瞳が教育ママ役をやった『下流の宴』も面白かった。
民放のドラマがだいたい他局やもしくはこのNHKの二番煎じのパターンが多く、昔見た『北の国から』やTBSの向田邦子脚本のドラマみたいなドラマがなくなってしまった。
それか『相棒』や『チームバチスタ』などの当たった配役のシリーズもの以外は、学園ものか刑事ものというドラマの定番の繰り返しか、もしくは他局が税務官ドラマをやればすぐに真似するといった、視聴率重視の作りが多かった気がする。

昔からNHKは、予算の問題もあるかもしれないが、それよりはおそらく視聴率度外視のギャンブルができる優位さからか、突如新人を大胆に起用したドラマで秀作を産み出す土壌があった。
剣道部の学園ドラマでしか見たことがなかったあの森田健作を主演にし、当時まだ新人だった 水谷豊と桃井かおりを起用し、まだ有名じゃなかった山田太一が脚本を書き、あの鶴田浩二を元特攻隊の管理職役にした名作ドラマ『男たちの旅路』もそうした土壌が産んだのだろう。
いやもしかすると、このドラマの成功が、その後のNHKのドラマの潮流を作ったのかもしれない。

しかし今日いまやっているABCのドラマ、宮部みゆき原作の『火車』は、ひさびさに民放で見る見ごたえのあるドラマだ。あの昔の『相棒』の寺脇康文がでている。
ライ・クーダ風のアコースティクなスチールギターがバックに流れる、怪我して休職中の刑事が親戚の銀行員に頼まれ、個人的に行方不明の女性を探す一風変わった刑事ドラマだ。
ライ・クーダといえば、あの赤が基調になったベンダースの映画、『パリ・テキサス』。初々しいナスターシャ・キンスキーが、行方不明の母親を演じ、父子が彼女を探しにいく、ロードムービーだ。
そこではライ・クーダのスチールギターが重要な役割を担い、映画の色調を色濃く縁取っていた。
このドラマも苦い色調のドラマであるが、感じは乾いている。いゃあ、てっきりまたNHKか、と思っていたらコマーシャルが入るのでおやと思った。
たしかにサスペンスのつくりだが、いつもの京都の名所をちらつかせた関係ある人が死んでばかりいるようなのとはひと味もふた味も違う。
丁寧な作りで、カメラワークも脚本もリアリズムが基調になっている。

しかしこの日はNHKとフジでも二時間ドラマをしていた。フジは三谷幸喜作のものだ。
全部見れないのは残念だが、『火車』は原作も超有名らしい。だがドラマもよくできている。