ギャラリー知(とも)の『三人展 「ねぇ、最近調子、どう?」』と村上春樹の「○○ピープル」

ギャラリー知(とも)、前に紹介したことのある面白いギャラリー。このギャラリーには、展示中の作品を創ったアーティストがほぼ常駐されていて、見に来た方にお茶を出してくれたり、世間話をしてくれたりする。(アーティストがおられないときは、親切なギャラリーのスタッフの方が、対応してくれる。)
なかなか、行けなかったのだが、先週の日曜日ひさしぶりに近くに行けたので、立ち寄ることができた。
いま、もう明日1日までだが、『三人展 ねぇ、最近調子どう?』というテーマで、三名のアーティストの作品が展示されている。三人展 「ねえ、最近 調子、どう?」 | 京都コンテポラリーアートギャラリー GALLERY TOMO
三名とも、個性的な作風で、それぞれ魅力的だったが、なかでも、クレー風の大きな、一昔前風の抽象画が眼を引いた。わたしは、クレーの絵が昔好きだったので、思わず近寄ってみると、絵の具のあとが、繊維のように「織られて」いるのだった。
クレーの実物を、わたしは見たことが無い。それで、詳しいことは全く知らないのだが、おそらく、クレーの絵も、近づいてみたら、こんな風に絵の具が筋目のような線を描いているのでは、と思わされた。もちろん、織られた色にはたくさんの色がコンポジションされていて、集合して独特の色合いを出していた。
その作者の方がおられたので、「クレーみたいだ」と感想を述べると、うなずきながらも、「スーラみたいだといわれることもあるんです」とおっしゃっていた。たしかに、上記のように、線で絵の具を重ねる絵もあれば、スーラのように、点描で描いていた作品もあった。どれも、キャンバスが大きく、絵の具が分厚く、近づくと色の出し方がよくわかる。
なかなか、実作者の横で絵を鑑賞する機会はないので、面白かった。(この方は、あとでギャラリー知のブログを見ると染色の専攻をされていた。)

さて、またわたしは、それら大きな作品と全く対照的な小さな葉書サイズくらいの銅版画を収めた、小さな額がいくつも並べられた壁面に引き寄せられた。モノクロの銅版画には、ギャラリー知のブログにも、一枚紹介されていたが、不思議な小人のようなキャラクターが、面白い動きをして、中には、中世の魔女や妖精を思わせるキャラクターも描かれていた。
これらキャラクターは、わたしには、村上春樹の短編や長編によく出てくる、あの「○○ピープル」という存在を思わせるのだった。
この銅版画作品群は、一貫して、この「○○ピープル」風の人物?たちを、作者いわく「物語風に」連作のような形で、取り上げ描いており、よけいに、村上作品の世界を思わせるのだった。
(この作品の作者に一度提案したい。村上春樹さんに、直接これらの作品の写真でも送ってみられては如何?あの有名なスガシカオさんは、無名の頃、一度ファンであった村上春樹に自分のCDを直接送っており、そのCDは、なんとちゃんと村上氏により、試聴されたという、これは村上春樹本人が、エッセイに書いていた。)

明日までの短い展示だが、もし間に合えば、もう一度行って見てきたい。