村上春樹新作発売前夜とは知らず春樹氏旧作コミックショック高野店で4冊も買う〜bookカフェユニテにて5月に古本市開催

出町のコミックショックはかつてわたしのよく訪れた場所だった。
その頃は仕事が終わるのが遅く、夜な夜な閉店間際のその店に入って、閉店ですと追い出されるまで立ち読みしたり、何冊か本を買い、そのあと、すぐ横のタナカコーヒーに入って買った本を読んでいた。
タナカコーヒーはその頃24h営業(男前!)しており、深夜でもよく近くの大学の学生が勉強したり駄弁ったりしていた。いまは0時に閉店している。
コミックショックは、その名の通りコミック中心の店だ。BOOK・OFFのたぶんローカル版といえるチェーン店なのだが、古書店並みの恐るべき品揃えのコーナーが一箇所だけあり、ときどき掘り出し物があった。わたしはその店で買った本がいまもたくさんある。
たぶん店員さんに古書好きの方がいたのかもしれない。なんとなくあの人じゃないかと思う顔はあった。
この出町店は、もうない。隣にあったかなり老舗だったレコード屋さんがたしか2年前に閉店したあと、二つの店舗ごとフレスコになってしまった。
ただコミックショックの高野店がまだ健在だ。近くの丸山書店は惜しまれながら?なくなり、(ここも男前な24h営業だった)大垣書店に変わってしまいましたが…。
昨日久しぶりにその高野店に立ち寄ると、標題の村上春樹の昔の単行本が翻訳やエッセイも含めずらっと並んでいた。
わたしが村上春樹を読み出したのは遅く、ほぼ新作以外は文庫になっていたから、単行本で読んだのは、学生時代友達に借りて読んだ以外は、たしか『1Q84』しかない。
わたしが大学生の頃、しょっちゅう泊まりに行った友人は村上春樹フリークだったので、彼の本棚にはたくさんの村上本が並んでおり、わたしは彼に借りてときたま読んでいた。
彼の下宿で何回となく見かけた『中国行きのスロウボウト』の古い単行本がそのコミックショックでみたとき、懐かしい想いがした。それは、はるかのちに文庫であらためて読んだときとはなぜか違うものだ。
わたしはしかし当時ろくに村上作品を読んでなかった。なんとなく意識して読まないようにしていた。
しかし社会人になってから会社のパートの若い娘が村上ファンで、『ねじ巻き鳥クロニクル』を借りて読んでから、前に少しかじっていたものもふくめ、あらためて読み始めたのだった。
いかにも遅れてきた村上ファンだった。
コミックショックのそのコーナーにPOPがひらひらとしていた。見るとなんとここではいま文芸書やライトノベルのセールをやっていて、270円以下の文芸書は半額だという。
調べると値札220円の本が、この本以外の村上本に何冊かあった。
『日出ずる国の工場』『ぼくが電話を掛けている場所(レイモンドカーバー)』他にもあったが、自転車だったのでこれら3冊と、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の新装版の単行本、これは割引対象外だったが、ついすぐ読みたくなり買うことにした。
『世界の』は文庫で読んでたのだが家を探すとないからというのもある。
こうやって本がたまってゆく。
しかし考えると、わたしは文庫の新刊は買っているので出版社には許してほしいが、村上作品の単行本はコミックショックで何回か買っていたことを思い出した。
『ねじ巻き鳥クロニクル』と『1Q84B1とB2』いずれもあの出町店で買った。
不思議なのは、たしかそのときも、今回と同じく、昼間にM君と会った日だった記憶があることだ。
わたしは昨日友人のM君ととある美術館にいって絵を見てきて、その帰りだった。
実は、その前に、ここははじめて入ったが、美術館をでてふらふら川端通りを歩いていると、bookカフェという看板が目に入り、矢印の方へ歩くと、普通のマンションの駐車場の奥の一階部分にそれらしいまったく喫茶店の感じがしないドアがあった。
普通のマンションの入り口に見えた。
カップルがなかに入ったので、釣られて入ると、ギャラリーになっていて、奥にわりと広いテーブルが並んでいた。
新しいきれいな新刊書店にあるような本がたくさんおいてあった。
ここで本を読み通せるかはわからないが、買わずにここでお茶を飲みつつ読むことができれば、本を買うことを少なくすることは可能かもしれない。
出掛けにチラシをもらった。5月2日から12日に古本市をそこでやられるらしい。何店かの古書店が参加されるらしく、チラシにはよくわたしが伺う善行堂さんの名前もあった。
いゃあ、みなさんがんばってるな〜。
実は当方、急に寒さが戻った気候のせいか、気分が滅入りがちで、本も読んでない本ばかり目につき、なぜこんなに読むのが遅いのかほとほとあきれ落ち込むではないが、気が急いて活字が目に入ってこない日々を数日過ごしていた。
このユニテでしかし本を見ると、読んだことのないものばかりをあらためて知らされ、かえって気分が晴れていくのがわかった。
絵を見たせいかもしれない。
この店の棚に『本は読めないものだ』というタイトルの本があった。なかは見ていないが、わたしにはうってつけのメッセージだった。
読みたくないときは読まなくていい。
しかしまた本屋にはいればこんなして買ってしまい、結果として読むことになるだろう。
今日夕刊を見ると村上春樹新作発売と写真入りで取り上げていた。
新作はもちろん読みたいが、すぐでなくともよくなっている。昔もそうだった。
発売後何年も経っていまからまた『中国行きのスロウボウト』や『世界の』を読もうとしている。