雪降る〜バート・バカラックのレコード聴く

昨夜寝る前に、外をふと見るとえらく雪が積もっていた。もうやんでいたが、ずっと降っていたらしい。

実は昨夜は夕方外で食事をすませ、帰ってから、作りおきするため、クリームシチューを作っていた。
偶然おあつらえむきの取り合わせとなった。

「降るかもしれませんよ。タイヤはスタッドレスですか?」夕方寄った近くのお茶屋さんのおかみさんが言っていた。
その方は比叡平から通われている。そこらあたりは冬は必需品だそうだ。
岩倉も昔ほど降らなくなった。しかし降れば道も時間帯によっては、普通のタイヤでは恐い。
次の日、車で外出する予定があったので、作りおきしたのだったが、でれるだろうか?(案の定、翌朝はもっと積もり車は困難になった。)

クリームシチューは久しぶりだ。普通に市販のルーを使う。いつもカレーなのを、シチューにした。
今回は試しにゆずを少しだけ入れてみた。
少しなのにメチャメチャ風味がする。あまりあってないかもしれないが、和風シチューといった感じだ。(ゆずは欠片で鍋一杯に影響を及ぼす、恐るべし。)

シチューはストーブの上に鍋をのせ作るのである。冬場はこれでガス代が節約できる。
なんせガスヒーターを動かし出してから、ガス代がすごい勢いで上がった。(先月は8000円を越えた!)

台所が寒いのでストーブを運び、そこで作業した。
どうもそれだけではなにか足りない。なにか聴くものが欲しい。
昔、わたしが子供だった頃、母が冷蔵庫の上にトランジスタラジオを置いて聴きながら炊事をしていた。それを思い出して、わたしの部屋に最近使わずに置きっぱなしの小さいステレオを持って降りてきて、その冷蔵庫のうえにおいた。

一部故障してCDが聴けなくなってしまった。しかしこの機械はレコードプレーヤーがついていて、USBも使える。5年くらい前に通販で買ったのである。中国製だった。
まだレコードが乗ったままになっていて、それをかけてみた。
よく鳴ったが、もともとこの機械はターンテーブルの回転がなぜか早く、微妙に音が高い(関東ヘルツに合わせているのかもしれない)。
正規の音にするには、レコードクリーナーを利用してレコードのはしっこに摩擦を起こし、回転を少し弛めて聴かなければならない。
ややこしいかもしれないが、極めてアナログなことをやって聴いていたが、さすがに邪魔くさく聴かなくなってしまった。

しかしこの際、そういうことは言ってられない。なにか音の鳴るものが欲しかった。あれだ、と思ったらすぐにやってみないと気が済まない。

やってみるとなんとか鳴ってくれた。

ディオンヌ・ワーウィック・シングス・バート・バカラックディオンヌ・ワーウィックバカラックの歌を歌って有名になったらしいが、このアルバムはその業績をまとめたベスト版みたいで、1978年のクレジットがある。
実際には1960年代のヒット曲ばかりである。
たぶん録音もその当時のものだろう。

バカラックといえば、村上春樹の1980年代に発表された短編に「バート・バカラックはお好き(のちに「窓」に改題)というのがあった。
それには、自宅に招いた大学生のために、ハンバーグステーキを焼く主婦が出てくる。
その主婦は大学生にとっては、充分魅力的で、彼にとってはそれがバカラック的な体験であった。つまりバカラックとは「大人」、それも憧れのキュートでエレガントな大人の異名なのである。

わたしはバカラックを聴きながらシチューを作ったが、いつになれば、そんな「大人」になれるのかを考えた。
もう齢はいよいよ大台の○十になるというのに。

雪はまだ昼過ぎにも降っていた。