JDサリンジャー、ライ麦畑続編に訴訟

久しぶりにこの名前を目にした。2009年6月3日付け朝日新聞朝刊にて、サリンジャーの名前が目に飛び込んできた。
「米小説家J・D・サリンジャー氏(90)は1日、自身の小説『ライ麦畑でつかまえて』(51年)の続編と銘打った作品の出版差し止めを求め、作者と出版社をニューヨークの連邦地裁に提訴した。…作品は「60年後 ライ麦畑を通り抜け」と題され、9月に発売される予定。作者は「J・D・カリフォルニア」と名乗る。…」

90!?
なんと彼は生きていて元気なのだ。Stell alive?goddamn it!ってライ麦畑のホールデンなら叫びそうな気がする。
裁判でサリンジャーが勝つかどうかわからないが、たしか5年ほど前村上春樹さんが訳してから我が国でも「キャッチャー」と呼ぶ習わしのこの小説の続編なら読んでみたいと思うのは私だけではないだろう。
しかし本家本元の作者がまだ生きていて、異議申し立てするときけば、いささか興ざめする。
ただサリンジャーの作家としてでない部分でのいろんないままでの情報・ものすごい偏屈で、家の回りにやけに高い壁を巡らし、小説も発表せず、ひたすら世間と断絶し隠遁生活をしている・を考えると単なる老害ともいうべきとばっちりかなと思わなくもない。
かえすがえすも、作者本人の手による続編だったらどんなによかったか、とよけいな落胆まで味わった。
じつは記事を見たとたん、マジで一瞬そう思ってしまったのだ。
やれやれ。

☆ちなみに
村上春樹は自分の小説で多発させているこの「やれやれ」ということばをこのキャッチャー・イン・ザ・ライを翻訳したとき、主人公のよく使うセリフShock meやChrist itの訳として使った。
我が国で60年代にサリンジャーを日本に紹介し、この小説をはじめて日本語に訳した野崎孝さんは、(そのころは朝日新聞記事と同じく「ライ麦畑でつかまえて」として知られていたが)たしか「まいったぜ」と訳していた。
この「やれやれ」はあのチャーリー・ブラウン吹き出しで“Sigh”(文字としては「ためいき」の意)というのを谷川俊太郎(詩人)がピーナッツシリーズで訳していたのだが、ニュアンスは若干ちがうが使ったのはその方が早い。