文学

京都58年振りの積雪 「男たちの旅路」と「相棒」 荻原魚雷「『荒地』と鮎川信夫」/「活字と自活」(本の雑誌社)

京都は元日、つまり昨日昼(たしかうちの辺りでは13時過ぎ)から雪が降り始め夜には市内でも積雪16センチという(ニュースによる)、かなりな降りとなった。わたしの家近辺はもっと降った。ニュースでは58年振りの積雪とのこと。 今年は始まったばかりだが、…

村山由佳『ヘヴンリー・ブルー』(集英社文庫)と宮沢賢治『告別』

思えばあのころから、彼の瞳は私だけに注がれていた、自惚れじゃないかなんて疑う気も起こらないほど、それは混じりけのない、まっすぐな視線だった。 それが証拠に彼は、初めは文字を目で追っていてさえつっかえてばかりだった詩を、やがては一度も間違えず…

開高健『夏の闇』とNHK沢木耕太郎のロバート・キャパの特集

寒い。とにかく連日寒く、雪がちらほら今日もしている。天気がよければ、暖かいのだが、今日は、いま曇り空である。 昨日は、休みで、晴れていたので、布団が干せた。家の庭の木枝を少し切った。そのあと、沖縄から来られた真宗の僧侶の方の話を聞く会があり…

開高 健「河は呼んでいる」のなかの詩〜「・・・この章にワスレナグサの花束を添える。一篇の背後にあるのはあたたかい励ましと見る。」」

一気に、といっていいくらい、秋になった。 川遊びをしていて、足のつく水底が突如として深みになり体が沈んでしまうことがあったが、そんな感じで、秋の底が急に深くなった。そんな季節の段差のちょうど崖っぷちだった、22日金曜日、この日はまだ夏の名残の…

『街歩きの記憶』(山本善行)と「失ってしまったもの」と『中国行きのスロウ・ボート』(村上春樹)について〜ブッダ・カフェ第14回に参加して

最近、時折りお邪魔するようになった京都の銀閣寺の近くにある古書店・善行堂さんの店主山本氏は、「書物エッセイスト」として、時々京都新聞夕刊の「現代のことば」というコラムを担当されているようだ。山本さんは、非常に気さくな店主で、店を訪れる方に…

「サリンとセシウム」芹沢俊介と「原子力も世界破壊への信仰〜大澤真幸著『夢よりも深い覚醒へ』書評」田中優子〜もうひとつの『1Q84』

村上春樹の『1Q84』は、現実の1984年を舞台にしている。地下鉄サリン事件の約10年前で、あの事件で明るみになったオウム真理教とその教祖麻原を思わせる人物が出てくる。 昨年末、平田容疑者が自首したが、ちょうどその前月の11月21日に最後の実行犯の死刑が…

ラドンとコバルトの1960年代

少し前の話だが、今年1月25日の毎日新聞にこんな記事があったらしい(と知人からきいた)。 関東地方の一部で放射線量が一時通常の2〜3倍に上昇した原因は、放射性物質ラドンが降ったせいだというものだ。 ラドンと聞くと、わたしなんかは怪獣の名前しか思…

ブラームス交響曲第三番 第三楽章をドラマ『看取りの医者・バイク母さんの往診日誌』(TBS)で聴く・父のこと

今日仕事から帰ってごはんを食べていると、生前の父の親友のHさんから電話があった。 じつはHさんは、わたしが留守中も電話をかけて来られていたらしく、母がそれらしいことを、わたしが帰ってすぐ確か言っていた。 (二年半前にくも膜下出血による脳梗塞…

村上春樹とサリンジャー〜翻訳語と文化

前回村上春樹の小説から引用した部分〜「出鱈目な年の出鱈目な月の出鱈目な一日だった。…」と主人公の「僕」が語るシーンだが、これほど村上作品の中で怒る「僕」ないし主人公は実は珍しいことに気付いた。とくにこの短編(この作品はのちに長編『ねじまき鳥…

「天才バカボン」の歌〜勉強会の報告1

赤塚不二夫作の「天才バカボン」が、もとは「天才vagabond」だった。このことを、前回のブログコメントでiireiさんに教えていただいた。これは、わたしが知らなかったことだった。しかし、そういえば、、、。いつか、聴いたシャンソン風味付けの「天才バカボ…

勉強会案内付記2・「科学的」ということ〜小林秀雄のベルグソン念力の話

勉強会前日で、付記を書いている。気が急いていて、ちゃんと書けるか不安だが、足りない部分は勉強会で補足したい。前回紹介した鶴見俊輔さんの文章に、「国家予算のついたビッグ科学(サイエンス)は…」というフレーズがあったのを記憶している。いまオリジ…

大谷大春期公開講演:斎藤環「換喩・キャラクター・日本人」その2

講演会に参加した学生A君との会話です…。 「で、どうだった、講演会。面白かった?」 「まぁまぁ」 「換喩というのは知っていた?」 「日本のアニメキャラクターは換喩的なんだって」 「換喩的?よくわからないな。あの薬みたいな?」 「あれは肝油だよ!ミ…

あるブログより〜被災地の現地の情報

「賛否両論ある」とこのブログにもあるが、マスコミでは得られない現地の情報がはてなブックマークにあったので、ここにリンクを貼ります。 内山幸樹のほっとブログ : TVで自粛するようにと言われているが、実際に現地に物資を運んでみて分かったこと - live…

開高健「食後の花束」(角川文庫)

この本は昭和60年の奥付けだ。開高健はじつはわたしが文学と名のつくものを意識しはじめて読んだ最初の作家であり、告白してしまうが、かなりな傾倒ぶりを恥ずかしく思い起こす。この本は、近頃話題の銀閣寺前にある古書店、善行堂にて見付けて買い求めた。…

「歌謡コンサート・浜圭介の世界」と中原中也「港町の秋」

先週から今週にかけ、風邪を引いてしまった。どうも内田先生の講演会を見に京大へ行ったとき、背中がゾクゾクしていたのだ。 寝込むことはなかったが、咳鼻水が止まらなかった。 しかし昨日アルバイトが夜勤で仕事をしたら治りかけてきた。 仕事中、雪が降り…

内田樹先生の京都大での講演会に参加

昨日19日は、内田先生が京都大に来た。 京大へ行くのは、久方ぶりであったが、ちょうど以前仕事で出入りしていた校舎でもあり、会場の廊下にあったベンチでしばし感慨にふけった。。。 しかし、そんなことをしている間に、講演予定の教室には人だかりがして…

「六面体」広島市立大学大学院彫刻選考学生によるグループ展@京都寺町Gallery知

ひさびさの更新です。今日ハロワの帰りに偶然立ち寄ったギャラリーで、ひさびさに強烈なアート体験をした。 木彫りの子供の顔だけが壁から飛び出て、頭にもこもこした塊がついている。 タイトルは「雲として残す」 これも木彫りで寝転がった赤子の身体全体に…

弟(昔の世代)の犯罪(戦争)を家族(国家・共同体)は謝罪すべきか?〜「ハーバード白熱@東大」(2)

前回少し触れたNHK・ETV特集「ハーバード白熱教室@東京大学」については、ネット上でかなりコメントが見られた。 同番組でこれまでに放送されたハーバード大生と今回の東大生(ばかりではなかったらしいが)との比較など、みなさんわりと分析されてい…

文学の中の暑い夏(2)・村上春樹「海辺のカフカ」

今日も暑さはおさまらなかった。家は暑すぎるので、久しぶりに近くの市民図書館に行く。 夏休みで土曜日でもあり、そこそこの人たちが集まられ、黙って本を読んでおられた。 そう、この暑さを凌ぐには、黙って本を読む、これしかない。 本を読みながら、この…

文学にみる暑い夏〜幸田文「父」の昭和22(1947)年の夏

「なんにしても、ひどい暑さだった。それに雨というものが降らなかった。あの年の関東のあの暑さは、焦土の暑さだったと云うよりほかないものだと、私はいまも思っている。前年の夏だってその前の夏だって暑かったのだろうが、日本はまだ戦っていた。誰の眼…

PC壊れる〜Hotel Californiaについて〜ダンスについて

パソコンが壊れてしまった。(どうも指示してないおかしな動作をします。) こうしてブログを書くのも携帯メールからしかできず往生する。 しかし前からメールで更新していたんですが… 先週はろわ経由で紹介の一社、社会福祉法人事務職に応募したら昨日書類…

うるしという伝統樹〜かぶれを引き起こす作家たちに要注意

先日、2日間も大阪南河内の泉佐野の森に入り、森林ボランティアの講習を受けてきた。絶好の晴天に恵まれ、作業研修をはじめ、メンバーの共同作業による野外料理(夜炭火バーベキュー、朝味噌汁と焼ザケ、昼カレーとフルーツ)やゲーム等も順調に進み、森の…

出町柳のげんげ〜現国で知った中原中也の詩「吹く風を心の友と」 中原ブログ発見〜アラフォー5年鑑13・1979年

先日、用事があり出町を通った際、出町の三角州の西側の橋、葵橋の土手に下りひさびさに少し歩く。気温が大分上ってきたため、ベンチに座っている人も多い。ここからは、京都の北山が一望できる。わたしの住んでいる岩倉の山、箕ノ裏ガ嶽もみえる。 さて、土…

サリンジャーの亡くなった日〜ひこうき雲みる

今朝NHKのニュースでサリンジャーの死が報じられた。 昨年の5月にサリンジャーの名作「ライ麦畑でつかまえて(野崎孝訳)/キャッチャー・イン・ザ・ライ(村上春樹訳ではズバリ原題)」の続編を書いた作家と出版社を訴える訴訟をサリンジャーが起こした…

「恐ろしく月並みな嘆きのただ中にいる」小林秀雄の「昭和の別れ」

多くの方々がいまハローワークで失業給付を受けているのを見、わたしもその列の中に並んでいる事実を含め、大変な時代だなと痛感する。 また、職場を何らかの理由で離れることにも人との別れのような感覚が、実際職場の人たちを含めいろんな関係者の方々との…

11月13日、14日 中国と村上春樹について

散髪に行く:前に行ったのがいつだったか、会社の合併のことを話していたので、心配してくれていた。(もう学生の頃からそこに行っている)いちおう今就職活動中と答える。そのあとやはり日本企業より中国、アメリカよりヨーロッパEUやろうという話になる。…

BRUTUS2009/11/1号 特集「美しい言葉」より

先週土曜タクシー待ちの間、出町三角州のAmPmにて立ち読みし、思わず購入した。 高橋源一郎が、「村上春樹、美しいニッポン文学の未来。」というタイトルで、変な意味でなく村上文学をバッサリ斬っていて、頭が妙に整理される。「〜まずはデビュー作の『風の…

きんもくせい馨る〜彼岸花〜残暑〜田村隆一

今日用事で外を歩くとなんとなく鼻をつく香りが… 何年ぶりだろう、おそらく学生の時以来か、家の庭にもあるのに、道端に見つけたのを写真に撮る。 私の住む岩倉は京都市のチベットと言われるほど冬は寒くまた夏も蒸し暑い。稲田もずいぶん減ったが残っている…

檸檬の店閉店〜携帯打ち過ぎで筋肉痛!悲しいアラフォー5事情

先日紹介した梶井基次郎「檸檬」に出てくる京都寺町二条の果物店は、実は今年の一月に閉店されていた。 シャッターが早い時間でも下ろされ、そこにワープロ打ちの閉店のお知らせが貼られていた。 恐らく私みたいにときたま見に来る人間に向けてのメッセージ…

梶井基次郎「檸檬」〜もしかしたら京都モダニズムの源流

週末、空梅雨を幸い四条、三条辺りの街路にスーツ姿の集団や学生らしきラフな格好で自転車に二人乗りするアベックと多くの人が溢れている。 なかなかそんな時間に街に出れる仕事の業種ではないのだが、たまたま早めに退社でき、帰るのももったいなく足が繁華…