きんもくせい馨る〜彼岸花〜残暑〜田村隆一

今日用事で外を歩くとなんとなく鼻をつく香りが…
何年ぶりだろう、おそらく学生の時以来か、家の庭にもあるのに、道端に見つけたのを写真に撮る。
私の住む岩倉は京都市チベットと言われるほど冬は寒くまた夏も蒸し暑い。稲田もずいぶん減ったが残っている。
あぜ道にまだ彼岸花が咲いていた。赤とんぼも一匹見掛けた。
昼間は残暑が厳しい。夏の名残を味わえる。
松任谷由美が「残暑」といういい歌を書いている。

日傘をさし 土手を歩く
白い小さな イリュージョン
目を細めて 追いかけたの
夏をひきとめたくて

あなたの声に 去年の恋に
立ち止まって 涙ぐんで 季節を知るの
そんなこよみをありがとうと
いつしか伝えたい
(『天国のドア』1990年より)

たしかに日傘が要る日差しだった。家の庭にせみの脱け殻があった。これも夏の名残か…
「去年の恋」いづくにありや ユーミンの歌では残暑のなかにあらわる

夜、現代詩の巨匠田村隆一の詩集をひさびさに開くとこんなフレーズに出会う〜
ふるえるものはすべては秋のなかに
秋の光りのなかに
魂の色のなかに
われら盲いたるものすべては
落下する
(「腐敗性物質」-『田村隆一詩集』1966)
秋のなかに魂の色!胸に痛いことばだ。